寺山修司(1935-1983年)ほどアナーキーで実験的な活動をした創作者はいなかったのではないでしょうか。10代の頃、青森にあってすでに天才歌人の名をほしいままにし、大学入学のため上京し、詩人谷川俊太郎の薦めでラジオドラマを手掛けます。台詞となった寺山の言葉は時代にのって走りだし輝き、ついに「天井棧敷」の活動へと続いていったのです。
本展のタイトル「ノック」は、1975年4月19日、東京阿佐ヶ谷近郊で行なわれた30時間の市街劇のタイトルです。「あなたの平穏無事とは一体何なのか? 」(寺山修司 朝日新聞 1975年5月7日)と地域住民の玄関の扉を突然ノック(ノックに傍点つける)する、というものでした。「驚いた人が110番」(東京タイムズ 1975年4月20日)し、警察が駆けつけたという一幕もありました。本展ではこの市街劇「ノック」の真意を映像や多数の未発表資料などによって詳細に検証します。
また、当時「天井棧敷」が実施した夥しい数の海外公演が高く評価された点にもあらためて注目したいと思います。
1983年、寺山修司は47歳という若さで多くの謎を遺しこの世を去りました。寺山はいったい何を目指し、書を捨て街へ出ていったのか。本展ではその謎を現代の視点から探ります。
かつて、私は、「街は大いなる開かれた書物である」と書いた。
しかし今ならばこう書き直すことだろう。
「街は、今すぐ劇場になりたがっている。さあ、台本を捨てよ、街へ出よう」と。
演劇論Ⅱ「臓器交換序説(抄)」より 1982年 knok
展示内容:
第1章 青森・三沢時代(天才歌人誕生)
第2章 東京へ(シナリオの中で輝きを増す言葉)
第3章 あゝ、荒野(森山大道の写真)
第4章 幻想写真館と実験映画
第5章 演劇実験室「天井棧敷」
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