一年間にわたり一人のアーティストを4つの連続する展覧会によって紹介する、他に類を見ない画期的なプロジェクト「杉本博司 アートの起源」。2010年11月よりはじまったこのプロジェクトでは、独自のコンセプトと最高の技術から生み出された美しくも力強い杉本芸術が、科学・建築・歴史・宗教という根源的な4つのテーマから「アートの起源」へと収斂し、その全貌が明らかにされていく。
初回の「科学」に続き第2回展となる本展は、写真を主軸としながらもさまざまな表現に取り組む杉本の活動のうち「建築」をテーマとして取り上げ、敢えて焦点距離を「無限の倍」にずらして撮影した〈建築〉シリーズのほか、インスタレーションや立体作品などによって構成されている。とりわけ当麻寺三重塔の古材と写真作品を用いたインスタレーション《反重力構造》や、建築の起源を炎の記憶にまで遡り、1本の蝋燭の炎が燃え尽きるまでを写し取った写真を蝋燭の灯りのもとで展示する〈陰翳礼賛〉シリーズなど、当館の建築空間を活かして展示される作品は本展の大きな見どころとなった。
杉本がいかに構造や空間を捉え作品へと昇華させてきたのか、本展はその手がかりを提示すると同時に、私たちにアートの起源、ひいては人間の意識の起源としての「建築」を問いかける展示であった。
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