トーマス・デマンド(1964年生まれ)は、被写体となる状況を自ら制作して撮影する構成写真で知られる、ドイツ現代美術界を代表する作家の一人です。デマンドは主に政治的、社会的事件が起きた現場の風景を、写真をもとに厚紙で精巧に再現し、それを撮影します。
ちらりと浴槽がのぞくバスルームやがらんとしたコピーショップ、エスカレーターなど、ごく普通の
日常の風景が切り取られた世界。それらは一見本物と見紛うものの、よく見るとその空間を占める均一な質感によって、見る者は奇妙な違和感におそわれます。わけありの場面、日常の背後にある心理的な風景を、デマンドは静かに、ぞくぞくさせるような形で私たちの目の前に見せて
くれます。
本展は、初期作品から映像作品を含む新作まで、デマンドの活動を本格的に紹介する、日本の美術館では初めての個展となります。
【本展の見どころ】
①待望の日本の美術館での初個展
構成写真の第一人者として国際的に高く評価され、ニューヨーク近代美術館をはじめとして世界の主要な美術館で個展を多数開催してきたトーマス・デマンド。しかし、これまで日本での紹介は非常に限られたものでした。今回、初期作品から最新作までデマンド作品の全貌を大々的に紹介する、日本の美術館における待望の初個展です。
②現実か?虚構か?紙で精巧に作られた世界
学生時代に彫刻を学んだデマンドは、政治的、社会的事件が起きた現場の風景を、新聞等の写真をもとに厚紙でほぼ原寸大に再現します。それを撮影した彼の写真作品のほとんどが、見る者を圧倒するような大画面です。無機質で空虚感をも感じさせる紙の世界は、イメージが氾濫する現代社会に生きるわたしたちに現実とは何かと問いかけます。
③映像作品の代表作を一挙紹介
紙で作られた物たちが、劇中でどこかぎこちなく、奇妙に動く様は、これまで見たことがない独特な映像世界を生み出します。そこでは作品のもつフィクション性がより一層強調され、デマンド作品の心髄に触れることができるでしょう。
④最新の映像作品《パシフィック・サン》を本邦初公開
2008年、太平洋航海中に大嵐に襲われた豪華客船パシフィック・サン号。大きく揺れる船内の様子をとらえた衝撃映像は事故の2年後にインターネットで公開され、話題となりました。今回、デマンドはその映像をモチーフにした最新作を世界の美術館で初めて発表します。
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