第二次世界大戦後、焼け野原となった東京では、混乱のなかから新たな芸術を模索する若き作家たちが続々と登場しました。かれらの実験的な活動は「アヴァンギャルド(前衛)芸術運動」と呼ばれ、そのユニークな個性は、その後の日本の美術に大きな影響を与えています。
その中でも特筆すべき作家が池田龍雄(1928~)です。池田は兵役を経て、故郷・佐賀から上京、1948年に多摩造形芸術専門学校(現多摩美術大学)に入学して間もなく岡本太郎らが主宰した「アヴァンギャルド芸術研究会」を知り、前衛芸術運動へと傾倒していきます。1950年代には社会の事象に目を向けて、絵画におけるルポルタージュの可能性をさぐり、風刺のきいたペン画で一躍注目を集めます。さまざまなグループや運動に加わりながら旺盛に自作を発表、芸術の総合化を目指した「制作者懇談会」では映像制作などにも携わります。1960年代後半からは概念芸術に関心をもち、パフォーマンスも行うようになりました。現在でも、旺盛に新作を発表しつづける一方で、自身の活動をふりかえっての執筆や講演もさかんに行い、戦後日本美術史の証人ともなっています。
初の大規模回顧展となる本展では、日本の戦後美術を走りつづける池田龍雄の仕事を戦後から近作まで網羅し、アヴァンギャルド芸術の歩みとともに多面的にご紹介しました。
短く表示