ベルギーを代表する現代美術作家、ミヒャエル ボレマンスの日本の美術館における初個展を開催、初期から現在までの作品が集結する貴重な機会です。不透明な現代社会を生きる人間の宿命を描きだす絵画に、映像作品を加えた絵画36点、映像2点により構成。
ベルギーのゲントを拠点に活動するボレマンスは、30代に入った1990年代半ば、それまでの写真による表現から絵画へと転向し、急速に評価の高まった作家です。デ...
続きを表示
ベルギーを代表する現代美術作家、ミヒャエル ボレマンスの日本の美術館における初個展を開催、初期から現在までの作品が集結する貴重な機会です。不透明な現代社会を生きる人間の宿命を描きだす絵画に、映像作品を加えた絵画36点、映像2点により構成。
ベルギーのゲントを拠点に活動するボレマンスは、30代に入った1990年代半ば、それまでの写真による表現から絵画へと転向し、急速に評価の高まった作家です。ディエゴ ベラスケスやエドワール マネなど近世・近代絵画の描写に倣い、自国のシュルレアリスムの遺伝子も受け継ぐと評されるボレマンス。彼の絵画には、静けさの中に微かに謎めいた気配が漂い、観る者を深い思索へと誘います。時間的・空間的に現実から隔離され、自身の儀式や作業にただただ勤しむ人々を通し、複雑で不透明な現代社会に生きる人間を、人間の宿命のようなものをボレマンスは描き出します。
ボレマンスは、作品と厳しく向き合うため、制作数に比して、自身が完成作と認め世に出す作品数が圧倒的に少ないことが知られています。本展は、そのような作家が自身で選んだ絵画36点、映像2点を展示する稀有な機会となります。
ミヒャエル ボレマンス(1963-)は、かつて原美術館を訪れた際、当館の建築の歴史と佇まいに胸を打たれ、以来、この場所で個展を開くという想いを温めてきました。かつて原家の住まいとして家族が憩い、大戦を乗り越え、今は美術館として静かに生き続ける建築。彼はそこに自身の作品に似た時空を認めたようです。
現在、ベルギーのゲントを拠点に活動するボレマンスは、30 歳を超えた1990 年代半ば、それまでの写真による表現から絵画へと転向し、急速に評価が高まりました。近世・近代絵画の描写に倣い、自国のシュルレアリスムの遺伝子も受け継ぐ彼の絵画。そこには穏やかな静けさと不穏な気配が同居し、観る者を深い思索へと誘います。主たるモチーフである人物は、いずれも時間的・空間的に現実から隔離され、自身の儀式や作業にただただ勤しんでいます。
「彼らが実際に誰であるか、何をしているかに特別な意味はありません。これらはもっと普遍的、象徴的なメタファーなのです。(中略)どれも特定の個人の肖像としてではなく、一般的な“人間”です」*1
多くの場合、描かれたイメージは理論化されることを巧妙に避けており、解釈は困難です。ただひとつ言えることは、ボレマンスが、絵画史を踏まえた描写法を用い、時に古い写真を引用することで時代性を感じさせつつ、時に顔の特徴を捉えることで人物の個性を残しながら、それでもなお普遍的な存在としての人間を、人間であることの宿命のようなものを描き出しているということ。それは、現代の日本において多くの人々が抱える生き難さを映す鏡となり、国境を越えて感受され得るものでしょう。
作品と厳しく向き合うボレマンスは、制作数に比して、自身が完成作と認め世に出す作品数が多くはありません。本展は、そのような作家が自身で選んだ絵画36点、映像2点を展示する稀有な機会となります。
「(作品は)私の心を動かすような、私を傷つけるようなものでなければなりません。まさに“目にナイフ”ですね」*2
*1. 「Art iT」作家インタビューより。http://www.art-it.jp/interview14.php
*2. Michaël Borremans - A Knife in the Eye, VRT CULTUUR voor CANVAS, 2009.
短く表示
会場: 原美術館
会期: 2014 年1 月11 日~3 月30 日