「森村泰昌 なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」
森村泰昌は、名画の登場人物や女優などに自らが「なる」というユニークな手法で、80年代より一貫してセルフポートレートの写真作品に取り組み、国内外で高い評価を得てきた美術家である。この展覧会では20世紀の男たちをテーマとする最新シリーズ〈なにものかへのレクイエム〉を、完全版で紹介した。
美術史や女優をとりあげた以前の作品では、女性に変身するイメージの強かった森村だが、このシリーズでは一転して、三島由紀夫やゲバラ、アインシュタインやピカソなど、戦争と革命の20世紀を生きた男たちの姿に挑んだ。さらに「硫黄島の星条旗」など、歴史的瞬間をとらえた報道写真を題材に、独自の解釈で過去を検証し、現代に甦らせる。レクイエムとは、過ぎ去った人物や時代への哀悼と敬意をこめつつ、その姿を未来へ伝えること、と森村は言う。このシリーズで森村は、自らの身体という器に歴史の記憶を移し替え、過ぎ去った人物や時代への敬意をこめつつ、その姿を伝えてゆこうとしているのである。
なお本展は2010年3月より約1年をかけて、東京都写真美術館、豊田市美術館、広島市現代美術館、兵庫県立美術館の順に巡回した。
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